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東洋医学と西洋医学の違い
2020/06/10
東洋医学について 自然治癒力を高める東洋医学と西洋医学との違いを紹介
医学と聞くと、どんなイメージがあるでしょうか。
おそらく、病院や手術、薬などをイメージする人が多いと思います。
このような医学は西洋医学と呼ばれ、現代の医学の中心となっていますが、古くから私たちの生活は、東洋医学と深い関わりがありました。
東洋医学に基づいた治療は、現在も私たちの生活の中に多数存在しています。
東洋医学と西洋医学は、それぞれ特徴や、治療方法が大きく異なります。
今回は、古くから日本で馴染みが深い東洋医学について、ご紹介します。
東洋医学とは?
東洋医学とは、中医学(中国)、漢方医学(日本)、韓医学(朝鮮半島)、アーユルヴェーダ(インド)、ユナニ医学(西アジア)などの、東洋を起源とした伝統医学をさします。
東洋医学と西洋医学の違い
東洋医学と西洋医学は、視点や、病気に対するアプローチ方法が異なります。
西洋医学は、実証的かつ科学的な医学です。薬や手術などで、体の悪い部分に直接アプローチして治療します。
すでに起きている症状や病気に対し、素早く治そうとするのが特徴です。
一方、東洋医学は、症状のある部分だけでなく、体全体のバランスを整えることで不調を治そうとします。
今出ている症状を一時的に治すのではなく、原因を根本的に治していく治療法で、予防医学の側面もあります。
最近では、世界保健機構(WHO)が有効性を認めたことで世界の注目が集まっています。
具体的な治療法は、漢方薬や鍼灸やあん摩などを用います。
東洋医学の考え方「気・血・水」
東洋医学では、「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方があります。
体は「気・血・水」の3つの要素で成り立っていて、不調が起きるのは、このバランスの崩れが原因と考えられています。
「気」は身体や心のエネルギーであり、生命活動の源です。「血」は身体中を巡る血液のことで、「水」は体液やリンパ液などの、血液以外の水分をさします。
東洋医学では「気・血・水」の3つのバランスを整えることが、健康な状態を保つことに繋がると考えられています。
生活の中の東洋医学
現在の私たちの生活の身近なところにも、東洋医学に基づく治療がたくさん存在しています。
具体的には、鍼、お灸、漢方薬、薬膳を総称した「漢方」やインドの「アーユルヴェーダ」や「ヨガ」も東洋医学に含まれます。
日本での東洋医学
日本で発展した東洋医学は、中医学の伝来後に、独自に発達しました。
中医学とは
中医学は4000年以上前の中国が発祥です。
中医学は、中国伝統医学の略で、中国漢方をさすこともあります。
陰陽五行説など、自然哲学に基づいた中国の伝統医学です。
東洋医学の日本での歴史
日本での歴史は、7世紀頃に中医学が伝来し、当初は医学や医術、生薬など、中医学に基づく医療が行われていました。
しかし、だんだんと日本の風土や、日本人の体質や生活習慣に沿って、日本独自の考え方が確立されていきました。
漢方薬や鍼灸、あん摩マッサージ指圧等の漢方は、日本で独自に発展した伝統医学です。
漢方とは
日本独自に発展した伝統医療である漢方は、漢方薬をさすこともありますが、本来は鍼、灸、あん摩マッサージ指圧なども含んだ「漢方医学」をさします。
「漢方薬」は、漢方の理論に基いて、生薬を組み合わせて処方する医薬品です。
風邪をひいたときに、葛根湯を飲んだことがある人も多いと思いますが、葛根湯も様々な生薬を組み合わせています。
漢方の考え方「五行」
漢方は、「気・血・水」の考え方と同様に、「五行」も重視しています。
五行とは、もともと自然界に存在する「木・火・土・金・水」の5つの物質のことで、五行の性質を、人の体に応用し「五臓」として表しています。
「五臓」は「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(ずい)」の5つに分けられます。
漢方は「気・血・水」のバランスと同様に、五行を元にした「五臓」の働きを穏やかに整えることで、健康な状態を保つと考えています。
五臓「肝・心・脾・肺・腎」
漢方の五臓は、西洋医学で使われる内臓とは考え方が異なり、部位でなく機能や役割で分けています。五臓はエネルギーの源で、身体を支える柱と考えています。
それぞれ、たくさんの役割を担っているので、簡単に紹介します。
「肝」は血液を貯蔵する役割を持ち、循環や代謝、排泄や感情もコントロールします。
「心」は血液の循環や拍動、脳や精神をコントロールする役割です。
「脾」は血液が漏れ出ないよう統血したり、消化吸収をコントロールする役割です。
「肺」は呼吸、水分の循環、防衛機能をコントロールする役割です。
「腎」は生命力を貯蔵したり、水分代謝を調節する役割を持ち。生殖や老化をコントロールします。
漢方の歴史
漢方は日本独自の医学として発展してきましたが、明治時代にドイツやイギリスから西洋医学が伝わり、西洋医学中心の医制改革が起こりました。
しかし、その後も漢方が改めて見直されるようになり、発展し続けました。
1976年には健康保険適用の対象になり、医療用としても広く使用されるようになりました。現在では、治療に漢方薬を処方する病院も増えています。
鍼灸(しんきゅう)
鍼灸とは患部やツボに、鍼や灸で刺激を与える治療方法です。
鍼灸の治療方法
体には2,000箇所以上のツボが存在すると言われており、ツボは専門用語で「経絡」と呼ばれます。
経絡を鍼や灸で刺激することで、痛みなどの症状を緩和したり、体の機能を高めます。
鍼(はり)を使った治療
細いステンレス製の鍼で、ツボを刺激することで、血流を促進し、自律神経を整える効果や痛みや筋肉のこりをほぐす効果があります。
鍼を刺すというと、痛みが強いイメージがありますが、かなり細い鍼を使用するので、痛みはほとんどありません。
鍼の太さは0.14mm程で、髪の毛1本の太さは平均0.08mmといわれているので、鍼1本の太さは髪の毛2本分以下です。
最近では、鍼を刺し入れない鍉鍼(ていしん)を用いて治療することもあります。
お灸(きゅう)を使った治療
お灸は、乾燥したヨモギの葉からできたモグサ(艾)を皮膚のツボに置いて燃やし、温熱刺激を与え治療します。
血管を拡張させて、血行を促進します。
お灸を直接皮膚の上に乗せて着火させる直接灸と、皮膚との間に熱の緩衝材になるものを入れる間接灸があります。
お灸というと、「熱い、火傷する」といったイメージを持つ人もいるかもしれませんが、じんわりと心地よい温かさです。
施術中はヨモギに含まれる香りで、心身ともにリラックスできます。
最近では、自宅でできるお灸も販売されるなど、お灸はより身近なものになっています。
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あん摩マッサージ指圧
あん摩は古代の中国で誕生し、日本に渡来しました。
漢字では「按摩」と書き、「按」はおさえること、「摩」はなでることを意味します。
多くの人はお腹が痛いときに自然に手を当てたり、背中をさすると痛みがなくなった経験があると思います。
昔から人間は経験を通して知り、生活の中で自然に行なっていました。
あん摩は、江戸時代に一般的になり、その後の発展とともに正しく体系化され、近年「あん摩マッサージ指圧」という療法が確立されました。
あん摩術
あん摩は「なでる、揉む、押す、さする」などの手法で、血行を促し「気」の流れを整えます。
衣類の上から施術し、遠心性(心臓から身体の末端へ流していく)手技です。
人間が本来持つ自然治癒力を高めることで、疾病治癒に導きます。
マッサージ術
マッサージはヨーロッパで生まれ、明治以降に日本に持ち込まれました。
マッサージもあん摩と同じように手を使って行いますが、マッサージは皮膚に直接行う、求心性(末梢から心臓に向かって行う)手技です。
血流の改善などを目的としています。
指圧
指圧は、手や指を使って、全身にあるツボを刺激する施術方法です。
指圧は、古法あん摩、導引、柔道の活法を合わせ、独特に発展したといわれています。
指圧も、あん摩と同じように、人間の体に備わっている自然治癒力を高め、不調の改善を目的とします。
施術される人の体力や体格に合わせて、圧の強さや回数などが調節できるので、多様な症状に対応できます。
マッサージチェアで、もみ返しの経験がある人も多いのではないでしょうか。
指圧は、筋肉に対して垂直に圧をかけるシンプルな方法で、基本的にもみ返しが起こりにくい治療法です。
英語名でも「SHIATSU」と訳され、世界中で普及しつつあります。
アーユルヴェーダ
アーユルヴェーダは、5000年以上前にインド・スリランカで生まれた世界最古の伝統医学です。
中医学や西洋医学も、アーユルヴェーダから発展したと言われています。
アーユルヴェーダは、先代から受け継がれた「生きる知恵」とも言われ、予防医学や長寿だけでなく、心身の調和がとれた幸せな人生を目的としています。
アーユルヴェーダの語源
アーユルヴェーダは、サンスクリット語で、生命・長寿を意味する「アーユス(Ayus)」と知恵、学問、真理を意味する「ヴェーダ(Veda)」から来ています。
自分自身が、心と身体の状態を理解し、心身の調和を大切にすることで、心身ともに健康な状態になると考えられています。
アーユルヴェーダは、食事法から、普段の生活での考え方や、哲学にまで渡ります。
アーユルヴェーダを生活の知恵として生かすことで、より生きやすく、幸せな人生を目指します。
ドーシャ
アーユルヴェーダでは、世の中にある全てのものは「空・地・水・火・風」という5つの要素から成り立っていると考えられています。
人間を含む、全てのものはこの5大要素から成り立ち、5つの要素の組み合わせからできる生命エネルギーを「ドーシャ」と呼んでいます。
3つのドーシャ(トリ・ドーシャ)
アーユルヴェーダにおいて、ドーシャは体を構成する、生まれもった体質のようなものを指します。ドーシャは「風(ヴァータ)」「火(ピッタ)」「水(カファ)」の3種類あり、3つのドーシャを合わせて「トリ・ドーシャ」と呼びます。
それぞれのドーシャによって、良いと考えられる食べ物や、生活習慣が異なります。
例えば、ある人にとっては、爽快な気分になる運動でも、別の人にとっては疲れてしまうことがあるように、人によって合う・合わないがあります。
アーユルヴェーダでは自分の体質を知り、体質にあった食事や生活習慣などを取り入れることが、自然のリズムに沿った生き方に繋がると考えられています。
ヨガ
ヨガとアーユルヴェーダは、親戚のように非常に近い関係にあります。
ヨガもアーユルヴェーダも「ウェーダ」というインドの古い文献が基になっており、どちらも心身の調和や、健康を目的としています。
アーサナ
アーサナとは、ヨガのポーズをさします。
アーユルヴェーダは、食生活や哲学などから、身体へのアプローチが強く、また医学の側面もありました。ヨガは、エクササイズや健康法というイメージがあるかもしれませんが、本来のヨガの目的は、呼吸や瞑想法を通して自分自身と向き合い、瞑想から悟りに達することでした。ヨガは、実は精神的なアプローチが強いものです。
ポーズや呼吸法を深めることで、自分の内面を見つめ、自分自身を深く理解することに繋がります。
呼吸法
ヨガの呼吸は、鼻呼吸(鼻から吸って鼻から吐く)が基本で、腹式呼吸が推奨されています。
ヨガでは、呼吸は「肉体と精神を結びつけるための手段」とも言われ、呼吸を深めることが、心身の調和にも繋がります。
深い呼吸は、自律神経と交感神経のバランスや、エネルギーの流れを整えることができます。
瞑想
アーユルヴェーダでは、ドーシャを安定させ、自分と向き合うために瞑想を行います。
本来の瞑想は、悟りを開くためのものとされてきましたが、最近では深いリラックス効果やストレスが軽減されることも注目されています。
瞑想はアメリカに渡り、マインドフルネス瞑想とも呼ばれ、集中力のアップや仕事もはかどることから、多くの人が日常的に取り組むようになりました。
まとめ
東洋医学と聞くと少しイメージが湧きにくいですが、意外にも私たちの生活の身近なところにもあります。
東洋医学の素晴らしいところは、本来人間が持っている生命力を引き出し、その人らしく生きる手助けになることです。
身体だけでなく、心も健康な状態が本当の健康だといえます。
古くから繋がれてきた東洋医学の知恵を、生活の中に取り入れて、より生きやすく心地よい人生を目指したいですね。
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